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別居前の、また別居後離婚に至るまでの、他方配偶者が一方的に負担してきた生活費を、離婚に際して請求できるか?

 生活費を支払ってくれない配偶者に対して生活費を請求する場合は、他方配偶者は裁判所に婚姻費用請求の調停審判を申し立てることになりますが、通常、「申立月」からの婚姻費用のみ請求が認められることになりますので、その前の時期の生活費は、婚姻費用調停審判手続の中では請求出来ないことになります。       

 しかしながら、その後の離婚手続において、婚姻費用調停審判の「申立以前に負担していた生活費」について、別居前のものも別居後のものもいずれも、財産分与手続の中で請求することが出来ます。

 この点、最高裁判所第3小法廷判決/昭和53年(オ)第706号は、当事者の一方が負担した婚姻期間中の婚姻費用を財産分与において他方当事者に対して支払うよう命じています。

財産分与審判に対する即時抗告事件

東京高等裁判所決定/平成9年(ラ)第2323号

【判示事項】  財産分与審判に対する即時抗告事件において、将来支給を受ける退職金であっても、その支給を受ける高度の蓋然性が認められるときには、これを財産分与の対象とすることができるものと解するのが相当であるとして、抗告人(夫)が退職時に支給を受ける退職金のうち婚姻期間に対応する部分の4割を相手方(妻)が所得すべき額と定めた事例

       主   文

1 原審判を次のとおり変更する。

2抗告人は,相手方に対し,60万円及びこれに対する本決定確定の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3抗告人は,相手方に対し,抗告人が○○株式会社から退職金を支給されたときは,612万円及びこれに対する同支給日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

       理   由

1 本件抗告の趣旨及び理由

 別紙「即時抗告申立書」に記載のとおりである。

2 当裁判所の判断

(1)退職金について

 将来支給を受ける退職金であっても,その支給を受ける高度の蓋然性が認められるときには,これを財産分与の対象とすることができるものと解するのが相当である。そして,本件においては,抗告人の勤務する企業の規模等に照らして,抗告人が退職時に退職金の支給を受けることはほぼ確実であると考えられる。

 抗告人は,退職時期は,不確定であり,死亡する可能性もあると主張するが,退職金のうち財産分与の対象となるのは,婚姻期間に対応する部分であって,離婚後のどの時点で退職しようと,財産分与の対象となる退職金の金額は変わらないのであるから,抗告人が主張するような事情は考慮する必要はない。

 ところで,退職金が仮に離婚前に支給されていたとしても,その全額が離婚時まで残存しているとは限らないし(何らかの消費的支出に充てられる可能性がある。),夫が支給を受ける退職金について,妻の寄与率を夫と同一と見るのも妥当ではない。したがって,本件においては,退職金についての相手方の寄与率を4割とするのが相当である。

 なお,抗告人は,加算給3万7020円は退職金算定の基礎となる給与の額に含めるべきではないと主張するが,これを裏付ける資料を何ら提出しないから,採用することができない。

 以上述べたところによれば,本件において財産分与として相手方が取得すべき退職金の額は,次の算式のとおり612万円となる。

 {抗告人の月額基本給40万円×(離婚までの勤続年数33年の支給率54−婚姻以前の勤続年数10年の支給率15)−30万円(所得税及び市町村民税の概算合計額)}×0.4(相手方の寄与率)=612万円

(2)住宅ローンの返済について

 夫婦の協力によって住宅ローンの一部を返済したとしても,本件においては,当該住宅の価値は負債を上回るものではなく,住宅の価値は零であって,右返済の結果は積極資産として存在していない。そうすると,清算すべき資産がないのであるから,返済した住宅ローンの一部を財産分与の対象とすることはできないといわざるをえない。

 抗告人の主張は理由がある。

(3)養育費について

 家庭裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについては,「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情」を考慮することができる(民法768条3項)。離婚後に当事者の一方が負担した子の養育費も斟酌することができるものと解される。

 抗告人は,相手方は養育費の請求はしていないと主張する。しかし,原審における調停の経過を見ると,相手方が,財産分与に含めて,三女の協議離婚時から平成8年3月の定時制高校卒業までの月額5万円の養育費の支払いを請求したいと主張したが,抗告人が養育費についてはその支払いを求める申立てがされた後でないと話合いに応じられないとしたために,相手方は,追って養育費についても申立てをしたいと述べたこと,しかし,相手方は,その後,審理を迅速に進めるために養育費の請求は本件調停においてはしないこととすると述べていたこと,さらに,調停不成立時には,相手方は,別途養育費の請求をするかもしれないと述べていたことが認められる。このような経過に照らすと,相手方は,三女の養育費を請求する意思はあったが,調停の成立ないし審理が遅延することを恐れて,原審調停においてはその点についての具体的な主張・立証を差し控えたものであるというべきであって,相手方に養育費を請求する意思がなかったとはいえない。

 したがって,本件において財産分与の額を定めるに当たって,相手方が三女の養育費を負担したことを考慮することは何ら不当ではない。

 そして,平成7年度の生活保護法による保護の基準(1級地−1)によると,15歳〜17歳の居宅第1類の月額は4万6290万円であり,18歳〜19歳のそれは4万1100円である。生活保護の第1類は,個人単位の経費(食費・被服費等)であり,三女は平成8年1月14ひに18歳になっているから,原審判が抗告人に支払いを命じた養育費(100万円のうち,住宅ローンの清算分が40万7616円,借地の更新料が30万円であるから,養育費はその余の29万2384円であり,月額約4万円である。)の金額は相当というべきである。

(4)財産分与の額について

 以上のとおり,抗告人は,相手方に対して,更新料30万円及び三女の養育費30万円(29万2384円を30万円とする。)の清算として合計60万円を即時支払い,00株式会社から退職金の支給を受けたときは,そのうちの612万円を支払うべきである。

3結論

 よって,抗告人の本件抗告は一部理由があるから,原審判を変更することとし,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 筏津順子 彦坂孝孔)

東京高等裁判所判決/昭和60年(ネ)第3408号

昭和63年12月22日

夫から妻に対し、妻が居住する建物などを分与し、併せてその敷地について使用者っ権等を設定した事例


       主   文

一 原判決主文第二ないし第四項(被控訴人の控訴人に対する財産分与の申立てに関する部分)を次のとおり変更する。

 1 控訴人から被控訴人に対して別紙物件目録(四)記載の建物(但し、付属建物を除く。)を分与し、かつ、同目録(一)記載の土地につき、控訴人を貸主、被控訴人を借主とし、右建物所有を目的とする使用借権を設定する。

 2 控訴人から被控訴人に対して別紙物件目録(五)記載の建物を分与し、かつ、同目録(三)記載の土地につき、控訴人を貸主、被控訴人を借主とする同目録(六)記載の賃借権を設定する。

二 控訴人のその余の控訴(被控訴人の控訴人に対する離婚請求に関する部分)を棄却する。

三 訴訟費用は、第一、二審を通じ、これを三分し、その二を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。


       事   実

第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴人
  1 原判決を取り消す。
  2 被控訴人の請求を棄却する。
  3 訴訟費用は、第一、二審を通じ、被控訴人の負担とする。
 二 被控訴人
  1 本件控訴を棄却する。
  2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張当事者双方の事実上の主張は、原判決添付物件目録を別紙のとおり差し替え(以下、別紙物件目録(一)ないし(三)記載の各土地を「本件(一)土地」「本件(二)土地」「本件(三)土地」と同目録(四)及び(五)記載の各建物を「本件(四)建物」「本件(五)建物」という。)、原判決二枚目裏七行目の「内攻する」を「内向する」に、同三枚目表七、八行目の「入院、臥床していた」を「入院を余儀なくされたばかりか、病床の」に、同九行目の「物理的」を「肉体的」に、同裏二行目の「内攻して」を「内向して」に改め、当審における主張を次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

 一 控訴人
 1 離婚請求について
  (一) 控訴人と被控訴人との婚姻が解消されるべき事由はない。控訴人の被控訴人に対する行状に問題があったとしても、病気に原因したものであって、控訴人の責めに帰せしめることはできない。被控訴人が控訴人との婚姻生活に限界を感じたとしても、控訴人が病気で入院したということ以外にない。

(二) 被控訴人は、病気の控訴人を看護することもなく、控訴人の病気に起因する行状を針小棒大に非難するかたわら、離婚に備えて着々と控訴人の財産を領得していたものである。本件は、病気の控訴人を看護するよりか、控訴人の財産を取得して離婚するほうが得策であるとの被控訴人の狡猾な計算によって提起されたものである。

 (三) なお、原判決に従えば、控訴人所有の土地は、被控訴人との共有とされ、あるいは、賃料月額三万円で被控訴人に賃貸すべきものとされるが、控訴人は、これではまったく身動きがとれない。控訴人の今後の療養・生活等につき、具体的な方途の見込みがつかない状態での本件離婚請求は棄却されるべきである。

2 財産分与の申立てについて

(一) 本件(一)ないし(三)土地は、いずれも控訴人固有の資産である。被控訴人は、生計の維持に多大の貢献をしたものではないし、控訴人が右土地を保持し得たのは、控訴人所有の他の土地を処分したことによるものであって、被控訴人の努力によるものではない。原判決は、本件(一)及び(二)土地につき、控訴人と被控訴人との各二分の一の持分による共有とするが、同土地の利用状況から、特に共有関係を認める事由はない。共有関係を認めるならば、使用収益関係について判断すべきである。また、本件(三)土地につき、被控訴人のために建物所有を目的とする賃借権を認めるのも、いわゆる借地権価格を考えると、不当である。総じて、原判決は、社会復帰を試みる控訴人に極めて酷なものであってり不公平である。

(二) 被控訴人がこれまでに処分した控訴人所有の土地の売却代金は、約一億円に達するものであって、そのすべてが生活費等に充てられたものではない。控訴人から被控訴人に対する財産分与の前渡しとして、これも考慮すべきである。

(三) 被控訴人は、控訴人所有の土地を売却した代金で自宅を新築して、優雅な生活をしているものである。被控訴人が求めるのは、控訴人との有利な離婚のみである。これに対する控訴人の現在及び離婚後の生活状況を考慮しないで、また、病気であった控訴人が被控訴人を慰謝すべき事由があるのかを確定しないで、直ちに慰謝料的要素を加味して財産分与をするのは不当である。

二 被控訴人
1 離婚請求について
   原判決の認定は、正当であって、控訴人がこれを論難するところは、まったく一方的である。控訴人は、現在、アパートで一人で生活しているが(なお、その賃借に際しては、被控訴人が保証人となったものである。)、老齢年金と被控訴人から支払われる賃料とでもって、十分に生活が可能である。

2 財産分与の申立てについて
        原判決の財産分与についての判断も極めて妥当である。控訴人は、これまでの行状を振り返り、自らの権利を主張する前に、自分が父親としての義務をいかに果たしたのか反省すべきである。

第三 証拠関係《略》

       理   由

第一 離婚請求について
   一 《証拠略》を総合すれば、次の事実を認めることができる。
     1 控訴人(大正一三年一〇月七日生)と被控訴人(大正一三年一一月一〇日生)とは、昭和二七年四月一〇日に婚姻の届出をした夫婦であって、両者の間に、長女春子(昭和二八年五月二曰生)、長男一郎(昭和三三年七月一日生)、二女夏子(昭和三五年一〇月二〇日生)、三女冬子(昭和三七年一〇月一八日生)及び二男二郎(昭和四〇年九月一四日生)をもうけた。三女を生後間も無い昭和三八年三月三日に交通事故で亡くしたほか、他の四子は健在で、長女、長男及び二女は、現在、いずれも婚姻している。

 控訴人は、戦後、病弱な父松太郎に代わって農業を継ぎ、父所有の自作地、自ら賃借した小作地で陸稲などを栽培し、乳牛を飼うなどして、生計を立てており、被控訴人は、婚姻後、当時の控訴人宅で、控訴人の母タケ、弟松夫、妹竹子及び同梅子と同居し(控訴人の父松太郎は、被控訴人が控訴人と婚姻する前の昭和二三年四月一二日に死亡した。)、農家の嫁として、農作業を手伝った。
 控訴人らの夫婦仲は、どちらかというと内向的で、夫婦間の会話も少ない控訴人に対して、何かにつけて積極的な性分の被控訴人が不満を持つこともあったようであるが、婚姻後しばらくは、さしたる問題もなく推移した。

2 しかし、控訴人は、その後次第にノイローゼ状態に陥っていき、昭和三〇年頃、甲田病院(神経科)で診察を受けるほどになっ力。躁うつ病と診断され、投薬治療で回復すると見込まれたが、その症状は良くなる気配もなく、昭和三三年頃から、被控訴人に乱暴をはたらくようにさえなった。特に、昭和三五、六年頃になって、控訴人は、いわゆる農地解放によって取得した西多摩郡<番地略>及び同所<番地略>の土地を乙田工業株式会社に工業用地として売却し(所有権移転登記は、昭和三六年一○月一四日、同年八月一五日付売買を原因としてなされた。)、その売却代金で、別に土地を購入し、更にこれを売却して、被控訴人の叔父乙山五郎から本件(ハ)及び(ニ)土地(但し、換地処分がなされる前の土地である。)を代替に購入したが、残った土地で農業を営むだけでは生計を立てるのが困難となって、翌昭和三七年一二月頃から、戦前に勤務した丙田工業株式会社に再び工員として勤務するようになったところ、仕事上のストレスなども重なってか、行状が荒み、被控訴人に乱暴をはたらくだけでなく、物を投げたり、壊したりしてやたらと当たり散らすようになった。
 右工場用地の売却及び代替土地の購入に関して、控訴人は、町長、農業委員等の有力者宅、叔父宅などに押しかけて不平、不満を訴え、周囲のひんしゅくを買ったりしたが、被控訴人には、それも控訴人の疾患が原因しているように思われ、控訴人の乱暴などが原因して、被控訴人が子供らを連れて実家に戻ったことも一度に限らなかった。

3 しかも、控訴人の行状は、その後も改まる気配がなく、控訴人は、昭和四四年八月頃、甲田病院(神経科)に入院する事態となった。被控訴人が控訴人から乱暴を受けて実家に帰っていた際、控訴人の弟らの配慮で入院させたものであった。
 控訴人は、同年一二月に甲田病院を退院したが、翌昭和四五年四月から同年一一月まで、再び同院に入院する状態であって、昭和四八年暮には、長男の高校受験を来春に控え、控訴人の一向に改まらない行状に思い余った被控訴人によって、丁田病院に入院させられた。控訴人は、翌昭和四九年五月頃に丁田病院を退院後、同年一〇月頃、戊田病院に入院し、翌昭和五〇年五月頃、同院を退院したが、以上のとおりに入、退院を繰り返したため、同年六月三〇日、丙田工業株式会社を退職するに至った。

4 控訴人らの夫婦仲は、以上のような控訴人の度重なる入、退院、その間の控訴人の行状などが原因して、次第に円満さを欠くようになっていった。控訴人ら夫婦と同居していた母タケは、昭和四五年頃から、控訴人方を出て、控訴人の弟松夫方に身を寄せるようになったが、それも、控訴人らの夫婦不和が一因であった。
 また、タケと松夫とは、右に前後して、控訴人が農地解放によって取得した西多摩郡《中略》(現・同町甲原四丁目)二六二二番二の土地(同土地は、同番三の土地と併せて、その後に換地処分を受け、同所九番一八号の土地となった。分筆前の本件(支)土地であるが、以下、これを「甲原の土地」という。)、控訴人自ら売買によって取得した同町<中略>(現・同町乙原二丁目)二六九七番六の土地(以下「二丁目の土地」という。)、本件(ハ)土地(但し、本件(5)土地が分筆される前の土地である。)につき、タケと松夫とに共有持分があると主張して、東京地方裁判所八王子支部に持分確認等請求事件を提起したが(同庁昭和四五年(ワ)第三〇五号事件)、これも、控訴人らの夫婦不和が遠因となったようである(二丁目の土地は、当吠控訴杁ら夫婦の生計のために、丙川ウメに売却され、仮登記がなされていたが、タケらの仮処分によって、控訴人から丙川ウメに所有権移転の本登記がなされたのは、昭和五一年九月二二日になってのことである。
 右訴訟は、昭和五一年六月頃、控訴人の勝訴で終わったが、その間にあって、これに腹を立てた控訴人は、弟の松夫、姉の菊子に文句をつけ、昭和四七年七月頃、右訴訟を取り下げさせようとして、弟松夫方に押しかけ、警察沙汰となったほか、同年一二月頃、姉菊子が嫁いだ丁原一夫方に押しかけた際には、心配して駆け付けた被控訴人が丁原から何度も殴打されるということがあった。控訴人と親族との間も険悪な状態となっていき、控訴人が自殺を図ることもあった。

5 そうこうするうち、被控訴人は、昭和四九年七月頃から昭和五〇年四月頃まで都立府中病院に入院し、胸椎椎間板ヘルニアの手術を受けることになったが(被控訴人の疾患は、外部から受けた衝撃によるものであって、特に丁凰一夫から殴られたことが原因したよ γである。しかし、控訴人の乱暴がまったく関係していないとはいえない。被控訴人は、これによって、身体障害者二級の認定を受けている。)、その入院中に、自宅で被控訴人が書きかけた手紙の下書きを見つけ、被控訴人の異性関係を邪推した控訴人から病床で殴る、蹴るの乱暴を加えられ(控訴人は、原審において、病床にいた被控訴人の左腿を靴で二回ほど軽く叩いただけである、と供述するが、病床での乱暴を軽視するような控訴人の供述をそのまま措信することはできない。)、これまでの行状なども重なって、控訴人に対する我慢も限界と感じられた。子供らに聞いても、控訴人に対し、父親としてのイメージを持っていない様子であって、このままでは、子供の就職、結婚に却って支障となるだけと考えた被控訴人は、以来、控訴人との離婚意思を強めていった。
 控訴人は、昭和五二年一月頃、家族から縄で縛られることがあったところ、自らその縄を解き、鎌などを手にして長男を脅すなどしたため、再び戊田病院に入院する事態になったが、被控訴人は、その約半年前頃から、控訴人との離婚を決意していて、昭和五五年四月頃、東京家庭裁判所八王子支部に夫婦関係調整の調停を申立てた。以後、被控訴人が控訴人を見舞ったり、その療養看護に当たったということはない。控訴人は、戊田病院での約一〇年間に及ぶ入院を経て、昭和六一年五月二七曰、同院を退院したが、控訴人との離婚意思を固めた被控訴人が自宅に迎え入れようとしないため、現在、アパートを借り、単身生活を余儀なくされている。

6 因みに、控訴人ら夫婦の家計は、昭和四四年頃まで、同居の母タケがやりくりしていたが、その後は、被控訴人が切り盛りするようになっていたところ、控訴人の数次の入院、退職、被控訴人自らの身体障害などによって、被控訴人は、控訴人が父松太郎から相続した西多摩郡<中略>(現・同町乙原三丁目)二七六九番一の土地(後記の売却に伴う分筆前の土地である。以下「相続土地」という。)をいわば切り売りして、その売却代金で専ら生計を賄った(被控訴人が働きに出たこともあったが、期間はごく僅かであるし、また、昭和五二年頃から、甲川八郎に委託し、本件(五)建物で営業をして収入を得ているが、月額約八万円程度にすぎない。)。二丁目の土地を丙川ウメに売却したのも生計のためであった。
 控訴人所有の土地を売却するにつき、控訴人が予め承諾した場合もあったが、被控訴人が自らの判断でした場合が大半であって、控訴人らの長男、二男の大学進学及び二女の専門学校進学に伴う学資、長女、長男及び二女の結婚費用も、右売却代金で賄われた。控訴人ら夫婦は、昭和五二年に本件(一)土地上に自宅(本件(四)建物)を新築したが(但し、付属建物の倉庫居宅は、本件(二)土地上にある。)、その建築資金(約一七○○万円)も、右売却代金で工面された(保存登記は、被控訴人の名義でなされているところ、被控訴人は、原審において、建築資金を控訴人から贈与されたものと考えている、と供述するが、右供述は措信し得ない。)。また、被控訴人は、自宅の新築と前後して、本件(三)土地上に店舗(本件(五)建物)を構え、その営業を甲州八郎に委託して、生計の一助としているが、その建築資金(約四〇〇万円)も、右売却代金で捻出された(被控訴人は、その建築資金を実家から担保提供を受け、自ら工面したとか、実家から一部借用したなどと供述するが、不確かで、措信し得ない。)。
 控訴人の治療費(自己負担分)も、被控訴人が右売却代金から支出していたが、前記調停を申し立ててからは、その支出に応じないため、生活保護によって支出された(現在、控訴人に対して返還が求められている。)。

二 以上の認定事実に鑑みれば、控訴人は、躁うつ病のために再三にわたって入、退院を繰り返したものではあるが、既に退院している現在では、その病状もかなり回復していると窺われるので、被控訴人が民法七七〇条一項四号を理由として控訴人との婚姻の解消を求める請求は理由がないといわなければならない。
 しかしながら、控訴人の前認定のとおりの精神的な疾患に起因した荒んだ行状などが原因して、幾度となく吸暴を受けた被控訴人が控訴人と離婚する意思を固めたこと自体、無理からぬところであると認められるうえ、控訴人の最終的な入院は、昭和五二年一月以来約一〇年間の長期に及び、その間にあって、控訴人が相続土地などを所有していたため、これを売却して、殊更に経済的に逼迫した生活を強いられたわけでもないのに、被控訴人は、控訴人を見舞ったり、療養看護に当たるという気遣いも見せず、治療費さえ途中から支出を拒むほど、控訴人に対して打算的で冷淡な態度に終始しているほか、その子供らにおいても、躁うつ病で入、退院を繰り返す父親と身体障害の母親という家庭環境のもとで、辛酸をなめずに済んだのも、控訴人に資産があったればこそといえるのに、控訴人を父親として慮る気持ちも乏しいことなどを併せ考えると、控訴人らの夫婦関係は既に破綻しており、控訴人らがこれを修復して、円満な夫婦関係を形成し、継続していくのは極めて困難であると解される。控訴人自身も、原審において、被控訴人との離婚も仕方ない、と述懐していることを考慮すれば、被控訴人が民法七七〇条一項五号を理由として控訴人との婚姻の解消を求める請求は理由があるというべきである。
 控訴人は、当審において、被控訴人が控訴人との離婚を求める意図などを問題にするが、控訴人の主張を肯認するに足りる証拠はない。また、控訴人の今後の療養・生活等の具体的な方途などを問題にするが、控訴人ら夫婦の財産関係は、後記のとおりに清算されるべきものであって、控訴人は、その残された資産を利用又は処分するなどして今後の生計を立て得るものと解されるから、控訴人の主張は採用し得ない。他に、控訴人ら夫婦の婚姻が解消されるべきものであるとの判断を妨げる証拠はない。

三 従って、控訴人の離惇団求を認容した原判決は相当である。

第二 財産分与の申立てについて
一 前認定の事実に、《証拠略》を加えれば、控訴人ら夫婦の資産関係は、次のとおりであると認めることができる。

1 本件(一)及び(二)土地は、控訴人が農地解放によって取得した土地を工場用地として売却した代金によって購入されたものであって、控訴人固有の資産である。この点につき、被控訴人は、同土地の前主が被控訴人の叔父であったので、安く購入することができた、と主張するが、被控訴人に持分を認めるほどの事情ではない。

 なお、右土地は、控訴人ら夫婦の自宅(本件(四)建物)の敷地となっているが、その母屋(本件(四)建物のうち主たる建物)は、本件(一)土地上に、付属建物(倉庫居宅)は、本件(二)土地上にある。

2 本件(三)土地も、控訴人が売買によって取得した土地がその後に換地されたものであって、控訴人固有の資産である。
 なお、右土地は、被控訴人名義の店舗(本件(五)建物)の敷地となっている。

3 本件(四)建物は、控訴人ら夫婦の自宅で、被控訴人名義で保存登記がなされているが、その建築資金が控訴人所有の相続土地を処分した売却代金で工面されたものであることは前認定のとおりであって、本来控訴人固有の資産である。建築工事を差配したのが被控訴人であったにしても、とりわけて被控訴人の持分を観念し得るものではない。

4 本件(五)建物は、被控訴人名義で保存登記された店舗ではあるが、前示のとおり、相続土地の売却代金で建築資金が捻出されたものと認められるのであって、自宅と同じく、控訴人固有の資産というべきである。
 右店舗では、現在被控訴人が甲川八郎に委託して、商売をしているが、その収入は、月額約八万円前後である。

5 相続土地は、その殆どが既に売却されているが、なお一部(二筆)が残っている。しかし、残存する土地は、道路として使用されるなどして、価額的には無いに等しいものである。
 なお、相続土地の売却代金は、数千万円に達するものであって、自宅及び店舗の建築資金(合計で約二○○○万円強)、子供らの学資、結婚費用を賄ったほか、生活費に充てられた。被控訴人は、すべて費消したように供述するが、措信し得るものではない。控訴人が取得した五○○万円(乙川に対する売却代金の最終入金分)譲渡所得税などを差し引いても、被控訴人には、それまでに取得した売却代金のかなりのものが残っているはずである。

6 甲原の土地は、現在、一部が分筆され、残りが本件(三)土地となっているが、その分筆した土地を甲川八郎に売却し、代わりに取得したのが北佐久郡《番地略》、同所《番地略》及び同《番地略》の土地(以下「丙原町土地」という。)であるから、同土地も、控訴人固有の資産というべきである。被控訴人に対して贈与を原因とする所有権移転登記がなされているが、控訴人から被控訴人に対する贈与の事実を認めるに足りる証拠はない。

二 以上の事実に基づき、被控訴人の財産分与の申立てについて検討すると、本件(一)ないし(三)土地、本件(四)及び(五)建物は、いずれも控訴人固有の資産であって、その取得及び保持につき、被控訴人が格別の努力を払ったといえるものではない。却って、控訴人ら夫婦の生活費などは、専ら相続土地を売却して検出されていたのである。丙原町土地も、控訴人固有の資産によって取得したものであるから、同様である。控訴人所有の不動産につき、被控訴人の寄与をとりわけて認め得るものではなく、清算的な趣旨で分与を考える余地は少ない。
 更に、被控訴人は、本件において、慰藉料を加味して、財産分与を申し立てるが、控訴人の被控訴人に対する行状に問題がないわけではないとはいえ、相続土地の売却代金で相応の生活が可能であったのに、控訴人が最終的な入院をしてから現在まで約一○年間にわたって、打算的で冷淡な態度に終始してきた被控訴人であってみれば、控訴人に請求し得る慰藉料自体、そう多額なものではないというべきであるから、財産分与に際して、これを重視することもできない。
 以上説示したところに、被控訴人の離婚後の扶養的な趣旨をも考慮に入れると、控訴人が被控訴人に対して分与すべき財産としては、被控訴人が相続土地の売却により取得した代金の残りのほか、被控訴人名義で保存登記がなされているが、実質的には控訴人の所有である自宅の母屋(本件(四)建物のうち主たる建物)及び店舗(本件(五)建物)を被控訴人に分与し、かつ、各建物の敷地に対する利用権を設定すれば十分というべきであって、右母屋の敷地(本件(一)土地)については、被控訴人が居住することを考慮して、被控訴人が生存中これを無償で利用し得る使用借権を、また、店舗の敷地(本件(三)土地)については、右店舗の営業利益等を考慮して、被控訴人から控訴人に対して対価を支払わしむべく、別紙物件目録(六)記載の賃借権を、それぞれ設定するのが相当というべきである。

三 控訴人から被控訴人に対する財産分与は、以上説示した限度で認め得るに止まるから、これと異なる原判決は変更を免れない。

第三 結論
 以上の次第で、控訴人の本件控訴は、財産分与に関する不服を申し立てる点で理由があるから、原判決の主文第二ないし第四項を主文第一項の1及び2のとおりに変更し、離婚に関して不服を申し立てる点は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九六条、八九条、九三条を適用して、これを三分し、その二を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の各負担として、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 村岡二郎 裁判官 安達敬 滝澤孝臣)

 別紙 物件目録
(一) 西多摩郡《番地略》畑六二五平方メートル
(二) 西多摩郡《番地略》畑五二二平方メートル
(三) 西多摩郡《中略》町甲原四丁目九番一八宅地二三八・〇三平方メートル
(四) 西多摩郡《中略》一〇番地五、同番地四〇所在家屋番号一〇番五木造瓦亜鉛メ

ッキ鋼板葺二階建居宅床面積 一階 一〇九・二二平方メートル二階 三九・七四平方メートル(付属建物)木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建倉庫居宅床面積 一階 四三・二五平方メートル二階 四三・二五平方メートル

(五) 西多摩郡《中略》甲原四丁目九番地一八所在家屋番号九番一八の一鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺平家建店舗床面積一五二・四〇平方メートル内 賃借権の内容
1 目的 普通建物所有
2 期間 本裁判確定の曰から二〇年
3 賃料 月額三万円(毎月末日限り当月分を持参又は送金して支払う。)

支払督促制度

金銭の支払、有価証券ないし代替物の引渡しを求めても相手が無視して支払いをしない場合に取り立てる手段として、支払督促という制度があります。

支払督促は、書類審査のみなので,訴訟の場合のように審理のために裁判所に来る必要はありませんし、手数料は,訴訟の場合の半額です。

相手が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てると,地方裁判所又は簡易裁判所の民事訴訟の通常の裁判手続に移行しますが、申立後相手が異議を申し立てなければ強制執行手続きに入ることが出来ます。

通常の裁判手続と異なり、手続きが簡便かつ安く済みますので、支払をしない相手にはまずはこの支払督促手続をされることをお勧め致します。

遺産分割手続

まず遺産分割をするためには、遺産分割当事者の範囲を確定しなくてはいけません。

分割当事者が一人でも欠けていれば、その遺産分割協議は無効となってしまうため、遺産分割は相続人全員が参加して行う必要があります。

 基本的には当事者から親族関係について伺ったうえで、戸籍謄本を取り寄せて相続人関係図を作成しますが、この段階で例えば、

①誰か相続人について婚姻・養子縁組や,離婚や離縁について無効を主張する方が出てきそうなとき、また私も共同相続人(子)だと主張する方が出てきそうなときは

→ あらかじめ人事訴訟という裁判で,婚姻・養子縁組無効や離婚・離縁無効、親子関係存在確認などについて先に決着をつける必要があります。

②相続人の中に認知症などにより判断能力に問題のある方がいるときは

→「成年後見開始手続」などの申し立てが必要となります。 

③相続人の中に行方不明の方がいるときは

→戸籍や住民票などで調査を尽くしても行方不明の場合,遺産分割をするには「不在者財産管理人(行方不明の方の財産を管理する人)の選任」手続が必要です。利害関係にない第三者が不在者財産管理人となって、裁判所の監督のもと遺産分割協議に参加することで遺産分割が可能となります。

→7年以上生死が不明な場合には「失踪宣告」という手続もあります。

④相続人の中に未成年者がいるときは

→基本的には未成年者については,「親権者」が法定代理人として遺産分割手続に参加することになります。但し,親権者も相続人になった場合や,同じ親権者となる複数の未成年者が相続人になった場合には,それぞれ利害対立関係にあるので,その未成年者のために「特別代理人」(その遺産分割事件について,親権者に代わって未成年者を代理する人)を選ぶ手続が必要です。

せき椎固定術において他から骨を採取した場合、採取箇所は変形があるものとして、後遺障害等級表12級5号に該当するか?

判例では、骨採取による採取先の骨の変形は後遺障害等級表12級5号には該当することは認められるが、逸失利益を考える上では後遺障害として考慮しないとしています。

この点について、神戸地方裁判所判決平成17年(ワ)第2758号判決は次の通り述べております。

「原告は前方固定術の際に骨盤骨から腸骨を採取しており、骨盤骨の変形は形式的には等級表第12級5号に該当するとみられるとしても、それ自体は労働能力の喪失に結びつくものであることは出来ない。痛みが持続する場合には、神経症状として労働能力の喪失をもたらし得るとみることが出来るとしても、原告は平成16年4月9日より後に骨盤骨の痛みを訴えていないから、症状固定の日に労働能力の喪失をもたらすような神経症状があったということは出来ない。」

西宮市営住宅条例(平成9年西宮市条例第44号)46条1項柱書及び同項6号の規定のうち,入居者が暴力団員であることが判明した場合に市営住宅の明渡しを請求することができる旨を定める部分は,憲法14条1項及び22条1項に違反しない、との最高裁判例が出されました。

平成25年(オ)第1655号 建物明渡等請求事件平成27年3月27日 第二小法廷判決

 主 文  本件上告を棄却する。

      上告費用は上告人らの負担とする。

 理 由

上告代理人榎本祐規の上告理由について

1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。

(1) 被上告人(兵庫県西宮市)は,平成17年8月,西宮市営住宅条例(平成9年西宮市条例第44号。以下「本件条例」という。)の規定に基づき,市営住宅(被上告人が建設,買取り又は借上げを行い,市民等に賃貸し,又は転貸するための本件条例2条2号から7号までに規定する住宅及びその附帯施設をいう。本件条

例2条1号)のうち被上告人が所有する第1審判決別紙物件目録記載1の住宅(以下「本件住宅」という。)の入居者を上告人Y1とする旨決定した。

(2) 本件条例46条1項柱書は「市長は,入居者が次の各号のいずれかに該当する場合において,当該入居者に対し,当該市営住宅の明渡しを請求することができる。」と規定しているところ,被上告人は,平成19年12月,本件条例を改正し,同項6号として「暴力団員であることが判明したとき(同居者が該当する場合

を含む。)。」との規定を設けた(以下,同項柱書及び同項6号の規定のうち,入居者が暴力団員であることが判明した場合に市営住宅の明渡しを請求することができる旨を定める部分を「本件規定」という。)。

本件条例において,「暴力団員」とは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下「暴力団対策法」という。)2条6号に規定する暴力団員をいうと定義されている(本件条例7条5号。以下,本判決においても同じ意義で用いる。)。そして,暴力団対策法において,「暴力団」とはその団体の構成員(その

団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等(暴力団対策法別表に掲げる罪のうち国家公安委員会規則で定めるもの(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則1条各号に掲げられているもの)をいう。暴力団対策法2条1号)を行うことを助長するおそれがある団体と定義され(暴力団対策法2条2号。以下,本判決においても同じ意義で用いる。),また,「暴力団員」とは暴力団の構成員と定義されている(同条6号)。

(3) 被上告人は,平成22年8月,上告人Y1に対し,その両親である上告人Y2及び同Y3を本件住宅に同居させることを承認した。その際,上告人Y1及び同Y2は,「名義人又は同居者が暴力団員であることが判明したときは,ただちに住宅を明け渡します。」との記載のある誓約書を被上告人に提出した。また,本件条例によれば,市営住宅の入居者又は同居者のみが当該市営住宅の駐車場を使用することができ,入居者又は同居者でなくなればこれを明け渡さなければならないところ(本件条例56条2項1号,64条2項,西宮市営住宅条例施行規則(平成9年西宮市規則第1号)53条8号),被上告人は,同年9月,上告人Y2に対し,本件住宅の同居者であることを前提に,本件住宅の駐車場である第1審判決別紙物件目録記載2の土地(以下「本件駐車場」という。)の使用を許可した。

(4) 上告人Y1は,平成22年10月当時,暴力団である六代目A組三代目B組C會に所属する暴力団員であった。被上告人は,同月,兵庫県警察からの連絡によって,上告人Y1が暴力団員である事実を知った。そこで,被上告人は,同月,上告人Y1に対し,本件規定に基づいて同年11月30日までに本件住宅を明け渡すことを請求するとともに,上告人Y2に対しても,本件駐車場の明渡しを請求した。

(5) 上告人Y1は,従前から別の建物を賃借してそこに居住しており,本件住宅には現実に居住することはなく,上告人Y2及び同Y3のみが本件住宅に居住している。

2 本件は,被上告人が,上告人Y1が暴力団員であることを理由に,上告人Y1に対しては本件規定に基づく本件住宅の明渡し等を求め,上告人Y2及び同Y3に対しては所有権に基づく本件住宅の明渡し等を求めるとともに,上告人Y2に対して本件条例64条2項に基づく本件駐車場の明渡し等を求める事案である。

3 所論は,①本件規定は合理的な理由のないまま暴力団員を不利に扱うものであるから,憲法14条1項に違反する,②本件規定は必要な限度を超えて居住の自由を制限するものであるから,憲法22条1項に違反する,③上告人Y1は近隣住民に危険を及ぼす人物ではないし,上告人Y2及び同Y3はそれぞれ身体に障害を有しているから,本件住宅及び本件駐車場の使用の終了に本件規定を適用することは憲法14条1項又は22条1項に違反するというのである。

4 地方公共団体は,住宅が国民の健康で文化的な生活にとって不可欠な基盤であることに鑑み,低額所得者,被災者その他住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保が図られることを旨として,住宅の供給その他の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策を策定し,実施するものであって(住生活基本法1条,6条,7条1項,14条),地方公共団体が住宅を供給する場合において,当該住宅に入居させ又は入居を継続させる者をどのようなものとするのかについては,その性質上,地方公共団体に一定の裁量があるというべきである。そして,暴力団員は,前記のとおり,集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を

行うことを助長するおそれがある団体の構成員と定義されているところ,このような暴力団員が市営住宅に入居し続ける場合には,当該市営住宅の他の入居者等の生活の平穏が害されるおそれを否定することはできない。他方において,暴力団員は,自らの意思により暴力団を脱退し,そうすることで暴力団員でなくなることが可能であり,また,暴力団員が市営住宅の明渡しをせざるを得ないとしても,それは,当該市営住宅には居住することができなくなるというにすぎず,当該市営住宅以外における居住についてまで制限を受けるわけではない。

以上の諸点を考慮すると,本件規定は暴力団員について合理的な理由のない差別をするものということはできない。したがって,本件規定は,憲法14条1項に違反しない。

また,本件規定により制限される利益は,結局のところ,社会福祉的観点から供給される市営住宅に暴力団員が入居し又は入居し続ける利益にすぎず,上記の諸点に照らすと,本件規定による居住の制限は,公共の福祉による必要かつ合理的なものであることが明らかである。したがって,本件規定は,憲法22条1項に違反しない。そして,上記1の事実関係によれば,上告人Y1は他に住宅を賃借して居住しているというのであり,これに,上記1(3)記載の誓約書が提出されていることなども併せ考慮すると,その余の点について判断するまでもなく,本件において,本件住宅及び本件駐車場の使用の終了に本件規定を適用することが憲法14条1項又は22条1項に違反することになるものではない。

以上は,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官

山本庸幸)

平成25年(オ)第1655号 建物明渡請求事件 平成27年3月27日第二小法廷判決

先日頂いた交通事故判決ですが、交差点での衝突事故。相手方は交差点手前で停止中。後続車である当方は相手方の後方に停止しようとしていたところ、突如相手方はバックを開始。いきなりのことで当方「パッシングはしたが、クラクションは鳴らさず。停止したが、相手の車両が衝突してきた」との主張に対して、相手方は「後ろは止まっていなかった。前方不注意あり」と主張。そして過失割合を6:4主張。他にも修理内容について争われたが、これについては後日書き込むにして、結局10回近く法廷が開かれて、結果当方5:相手方95の過失割合の判決が出ました。損害についても当方の主張が通りました。 争えばいいってもんじゃないと思いますよ。

本日借家明渡訴訟の原告として期日出廷しました。被告側は本人が出廷されましたが、裁判官は全くの法律の素人である被告に対して、杓子定規に「民法の教科書にはこう書いてありますから」と発言したり、前回期日で被告と裁判官が揉めたことを揶揄して「またあなたと楽しいお話し合いをしたいとは思わないですから」などと発言したり。まとまるものもまとまらない。被告さんの神経逆なでしてどうするの。

先日、最高裁判所より、責任能力のない未成年者の親権者の賠償責任についての判例が出されました。 これまで親権者には無過失責任に近い賠償責任が課されてきましたが、一般的に危険性を伴わない行為(校庭でサッカーボールをゴールに向かって蹴る行為)によって発生した損害については、基本的に親権者は責任を負わないと判断されました。

平成24年(受)第1948号 損害賠償請求事件 

平成27年4月9日 第一小法廷判決 

主 文 

1 原判決中,上告人らの敗訴部分をいずれも破棄する。

2 第1審判決中,上告人らの敗訴部分をいずれも取り消す。 

3 前項の取消部分に関する被上告人らの請求をいずれ も棄却する。 

4 第1項の破棄部分に関する承継前被上告人Aの請求に係る被上告人X2及び同X3の附帯控訴を棄却する。

5 訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。

理 由 

上告代理人森本宏,同大石武宏,同小島崇宏の上告受理申立て理由第3の3につ いて 1 本件は,自動二輪車を運転して小学校の校庭横の道路を進行していたB(当 時85歳)が,その校庭から転がり出てきたサッカーボールを避けようとして転倒 して負傷し,その後死亡したことにつき,同人の権利義務を承継した被上告人ら が,上記サッカーボールを蹴ったC(当時11歳)の父母である上告人らに対し, 民法709条又は714条1項に基づく損害賠償を請求する事案である。上告人ら がCに対する監督義務を怠らなかったかどうかが争われている。 - 2 - 2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。 

(1) C(平成4年3月生まれ)は,平成16年2月当時,愛媛県越智郡D町立 (現在は今治市立)E小学校(以下「本件小学校」という。)に通学していた児童 である。 

(2) 本件小学校は,放課後,児童らに対して校庭(以下「本件校庭」とい う。)を開放していた。本件校庭の南端近くには,ゴールネットが張られたサッカ ーゴール(以下「本件ゴール」という。)が設置されていた。本件ゴールの後方約 10mの場所には門扉の高さ約1.3mの門(以下「南門」という。)があり,そ の左右には本件校庭の南端に沿って高さ約1.2mのネットフェンスが設置されて いた。また,本件校庭の南側には幅約1.8mの側溝を隔てて道路(以下「本件道 路」という。)があり,南門と本件道路との間には橋が架けられていた。本件小学 校の周辺には田畑も存在し,本件道路の交通量は少なかった。 

(3) Cは,平成16年2月25日の放課後,本件校庭において,友人らと共に サッカーボールを用いてフリーキックの練習をしていた。Cが,同日午後5時16 分頃,本件ゴールに向かってボールを蹴ったところ,そのボールは,本件校庭から 南門の門扉の上を越えて橋の上を転がり,本件道路上に出た。折から自動二輪車を 運転して本件道路を西方向に進行してきたB(大正7年3月生まれ)は,そのボー ルを避けようとして転倒した(以下,この事故を「本件事故」という。)。 

(4) Bは,本件事故により左脛骨及び左腓骨骨折等の傷害を負い,入院中の平 成17年7月10日,誤嚥性肺炎により死亡した。

(5) Cは,本件事故当時,満11歳11箇月の男子児童であり,責任を弁識す る能力がなかった。上告人らは,Cの親権者であり,危険な行為に及ばないよう日 - 3 - 頃からCに通常のしつけを施してきた。 

3 原審は,上記事実関係の下において,本件ゴールに向けてサッカーボールを 蹴ることはその後方にある本件道路に向けて蹴ることになり,蹴り方次第ではボー ルが本件道路に飛び出す危険性があるから,上告人らにはこのような場所では周囲 に危険が及ぶような行為をしないよう指導する義務,すなわちそもそも本件ゴール に向けてサッカーボールを蹴らないよう指導する監督義務があり,上告人らはこれ を怠ったなどとして,被上告人らの民法714条1項に基づく損害賠償請求を一部 認容した。 

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次 のとおりである。 前記事実関係によれば,満11歳の男子児童であるCが本件ゴールに向けてサッ カーボールを蹴ったことは,ボールが本件道路に転がり出る可能性があり,本件道 路を通行する第三者との関係では危険性を有する行為であったということができる ものではあるが,Cは,友人らと共に,放課後,児童らのために開放されていた本 件校庭において,使用可能な状態で設置されていた本件ゴールに向けてフリーキッ クの練習をしていたのであり,このようなCの行為自体は,本件ゴールの後方に本 件道路があることを考慮に入れても,本件校庭の日常的な使用方法として通常の行 為である。また,本件ゴールにはゴールネットが張られ,その後方約10mの場所 には本件校庭の南端に沿って南門及びネットフェンスが設置され,これらと本件道 路との間には幅約1.8mの側溝があったのであり,本件ゴールに向けてボールを 蹴ったとしても,ボールが本件道路上に出ることが常態であったものとはみられな い。本件事故は,Cが本件ゴールに向けてサッカーボールを蹴ったところ,ボール - 4 - が南門の門扉の上を越えて南門の前に架けられた橋の上を転がり,本件道路上に出 たことにより,折から同所を進行していたBがこれを避けようとして生じたもので あって,Cが,殊更に本件道路に向けてボールを蹴ったなどの事情もうかがわれな い。 責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監視下にない子の行動につい て,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務が あると解されるが,本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照ら すと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。また,親権者の直 接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なもの とならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によっ てたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能で あるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかっ たとすべきではない。 Cの父母である上告人らは,危険な行為に及ばないよう日頃からCに通常のしつ けをしていたというのであり,Cの本件における行為について具体的に予見可能で あったなどの特別の事情があったこともうかがわれない。そうすると,本件の事実 関係に照らせば,上告人らは,民法714条1項の監督義務者としての義務を怠ら なかったというべきである。 

5 以上によれば,原審の判断中,上告人らの敗訴部分には判決に影響を及ぼす ことが明らかな法令の違反があり,この点に関する論旨は理由がある。そして,以 上説示したところによれば,被上告人らの民法714条1項に基づく損害賠償請求 は理由がなく,被上告人らの民法709条に基づく損害賠償請求も理由がないこと - 5 - となるから,原判決中上告人らの敗訴部分をいずれも破棄し,第1審判決中上告人 らの敗訴部分をいずれも取り消した上,上記取消部分に関する被上告人らの請求を いずれも棄却し,かつ,上記破棄部分に関する承継前被上告人Aの請求に係る被上 告人X2及び同X3の附帯控訴を棄却すべきである。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 山浦善樹 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志 裁判官 池上政幸)

家庭裁判所の調停により決められた子供の養育費として、今私に支払われている月々10万円の生活費を15万円に増やしてほしいと思っています。このような場合どうしたらよいでしょうか?

(ご回答)

婚姻費用分担に付き調停が成立した後に基礎となった事情に変更を生じ、従来の調停が実情に合わなくなった場合は、調停の取消変更を求めることができます。例えば、子供をあなたの方で引き取るという事情変更が生じたのですから、従前の婚姻費用分担額10万円を変更して、子供の養育費分を加算した15万円分に増額してくれるよう家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすればよいでしょう。

物損事故

物損事故において修理費が事故前の時価を著しく超えたときでも、高額修理費は請求できないか?

判例では、「交通事故により中古車両を破損された場合において、当該車両の修理費相当額が破損前の当該車両と同種同等の車両を取得するのに必要な代金額の基準となる客観的交換価格を著しく超えるいわゆる全損にあたるときは、『特段の事情のない限り』、被害者は交換価格を超える修理費相当額をもって損害であるとしてその損害を請求することは許されず、交換価格からスクラップ代金を控除した残額の賠償で足るものというべきである。」とされています。

しかし、車に思い入れのある被害者は納得いきません。その場合は、上記『特段の事情』を主張立証する必要があります。

では、『特段の事情』とはどんなものか? それは①被害車両と同種同等の自動車を中古車市場において取得することが至難である場合であるとか、②被害者が被害車両の代物を取得するに足る価格相当額を超える高額の修理費を投じても被害車両を修理し、これを引き続き使用したいと希望することが第三者から見ても納得できる場合といった事情がそれにあたります。

かなり厳しい要件です。

①の手続きにより仮執行宣言付支払い督促(書面)を手に入れたら、いざ②の強制執行手続きに移ります。

まず、②の手続きに入るためには相手の財産を探すことが必要になります。よく執行対象となるのが、給料債権、預金債権、相手が仕事で得た報酬請求権、売買による代金請求権などです。 そこで、以下、債権執行差押の手続きについて説明します。

まず、支払い督促を取った裁判所に対して、(相手方に支払い督促書面が送達されたことを証明する)「送達証明書」という書面を発行してもらいます。

送達証明書を得たあなたは、相手方の住所ないし本店所在地にある地方裁判所に対して、印鑑を持って、

a 差し押さえる債権を特定した債権差押命令申立書

b 仮執行宣言付支払督促(書面)

c 送達証明書

d (自分ないし相手が会社の場合に)資格証明書

e 第三債務者(預金債権差押の場合の銀行など)に対する陳述催告申立書

f 一定額の収入印紙と郵便切手

g 各当事者の宛名書きをしてある封筒×1

h 当事者目録×5、請求債権目録×4、差押債権目録×4(債務者、第三債務者がそれぞれ一人のとき、いずれかでも1人ずつ増えるときは1部増えます。)

以上の書類を提出します。  慣れないとかなり面倒です。

鋤 柄

従来、未婚の日本人男性と外国人女性の間に生まれた子供については、父親が認知をしても子供に日本国籍が認められていませんでしたが、この度の国籍法改正により、本ケースにおいて 結婚していなくとも子供の日本国籍取得が認められることとなりました。

 この改正に対しては偽装認知による国籍不正取得が容易になるとの指摘、批判があります。

 しかしこの問題において最も尊重されるべきは子供の利益ですので、偽装認知を理由に子供の日本国籍を認めないのは法の趣旨に反するでしょう。

 偽装認知対策として取り入れられるDNA鑑定の信頼性は極めて高いものとなっていますので、これによって国籍の不正取得は極力避けられるのではないでしょうか。

鋤 柄

物を売ったけど相手がお金を支払ってくれないとき、頼まれた仕事を終わらせたけど相手が報酬を支払ってくれないときなどには、もう国家権力を使って回収するほかありません。いわゆる強制執行です。

 執行するには、 ①訴訟など執行をするための前提となる手続、そして②執行手続、をとることが必要となります。

 ①の手続きにはいろいろありますが、比較的簡単なのは支払督促です。

 印鑑と、あるのであれば契約書などを持ち、相手の住所近くにある簡易裁判所という裁判所に行って、お金を支払ってくれないから支払督促したいと言えば、申立用紙をくれます。そこにお金を請求する理由(何年何月何日に、物を売ったけど代金いくらいくらを支払ってくれないなど)と、請求者の住所氏名、相手の住所氏名を書いて、手数料としての一定額の印紙と一定額の郵便切手を納めれば、申し立ては完了です。 その後、もう一度書面(「仮執行宣言申立書)」を裁判所に出して、相手が異議を唱えなければ、早くて1ヶ月程度で (時間はかかってしまいますね^^;)②手続きに進むことができるようになります。

 鋤 柄

久々にブログの更新をさせて頂きます。これまで皆様から交通事故、土地境界、離婚、債務整理等の案件についてご依頼いただきまして、誠にありがとうございます。 これからも皆様のお役にたてるよう精進しなければと思っております。宜しくお願い致します。

ところで、現在、訴訟を行っている案件のひとつに、隣地との土地境界をめぐる紛争があります。

訴訟資料を揃えることがなかなか難しい案件のひとつですが、境界確定の手法には様々な手法があります。公図面積と実測面積とを比較して主張する方法や、現場写真・空中写真で判別する方法、はたまた土地の地形や立木や境界標などの埋蔵物から判断する方法などなど・・ 

境界についての合意書のような、ズバリこれっといった証拠がなくても、周辺証拠、事実を積み重ねることで境界を主張する方法はあるんです。  

                                             (鋤柄)

 昨日のことですが、交通事故の案件で尋問をしました。尋問とは、裁判で争点となっている事実に深く関わる当事者や第三者を法廷に連れて、代理人と裁判所から話を聞く手続のことで、証拠調べとも呼ばれています。刑事事件などでは、よくTVのドラマなどでもお目に掛かれる光景ではないでしょうか。

 尋問は、こちら側から質問する主尋問、相手方から質問を受ける反対尋問、裁判官が直接質問をする補充尋問があります。主尋問は、通常味方になってくれる人に対して行うものですので、事前に打ち合わせやシミュレーションができますが、相手側から行われる反対尋問や裁判所による補充尋問についてはどのような質問が来るか詳しくは想定できないので証言者(供述者)にとっては大きなプレッシャーになります。

 過去には医療事件などでドクターや看護師さん、患者さんを尋問したこともありますが、どなたも法廷という独特の雰囲気の中では緊張するもの。 しかし、結局は自分の体験した事実を記憶通りに述べるほかはないのですから、せめて主尋問で余計な苦労を与えないよう質問のプランや打ち合わせでは気を使います。

                                   <増井>

 先日のことですが、私が担当している医療裁判の期日がありました。争点の整理や立証が困難で、既に4年近くが過ぎている事案です。 

 医療訴訟というと、専門的で難しい、時間も費用も労力もかなりかかって、しかもそう簡単に言い分が認められないのではないかというイメージを持たれるかもしれません。確かに、医療紛争は専門的な部分が多く、それがために準備に時間がかかったり、協力してくれる医師を探すのが難しかったり…。しかも、それが日頃馴染みの少ない裁判とからんでくるとなおさらです。

 また、医師(病院)側としても避けられないであろう事故というのも多数あります。

 しかし、医師にミスがなかったという事件は別として、 本来きちんと賠償が受けられるべき人までもが、裁判所での判断を仰ぐことなく請求を諦めざるを得なくなったり、数十万円程度のお見舞金で示談することを強いられているとすれば、それは極めて不幸なことで、法律家による努力がより求められる分野でもあります。

 東京地方裁判所の医療集中部(医療裁判を中心に扱う裁判体のことです。)では、一審の裁判を極力2年以内に終結させることを目標としているようです。この目標達成のため、タイムテーブルを期日ごとに作成して裁判の計画を立てたり、争点を整理する表を作成して事件をわかりやすくしたり、また専門委員という第三者的な医師を裁判所に呼ぶなどして、医学的な見解を法廷で尋ねるケースも多くなってきています。

 弁護士としても、医療文献を備えるなど、医療に特化する事務所も増えてきました。医療事件は、今後より法曹の努力と発展が求められるべきフィールドと言えるでしょう。

                                                        <増井> 

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